中古物件購入時の住宅ローン減税についてご説明します。
弊社リンネ株式会社は、中古マンション売買仲介が主なため、このページでは中古物件(中古マンション、中古戸建て)購入時の住宅ローン減税に絞ってご説明致します。
住宅ローン減税とは?
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)とは、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときにおいて、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです 。(引用「国税庁 HP」)
つまり住宅ローン控除とはわかりやすく言えばこうなります。
「一定の条件を満たせば、払った税金(所得税)が戻ってきますよ!」
という何ともありがたい制度なわけです。
住宅ローン減税ポイント
- まず「住宅ローン控除」と「住宅ローン減税」の意味は同じ。
- 毎年の住宅ローン残高の1%を10年間(条件により13年間)、所得税から税額控除できる。
- 住宅ローンの借入れを行う個人単位で申請できる。
- 所得税で控除しきれない分は住民税からも一部控除される。
- 売主が課税業者の物件を、一定の期間(新築の場合は令2年10月から令和3年9月末まで、それ以外は令和2年12月から令和3年11月末まで)に契約した場合、令和4年末までの入居者を対象とする。
- 経済対策として、この延長した部分に限り、合計所得金額1000万円以下の者については床面積40㎡から50㎡までの住宅も対象とする特例措置を講ずる。
住宅ローン控除は税額控除である。
控除の方法は所得控除ではなく、税額控除です。
所得控除とは…
所得税の負担を減らすことができるのが「所得控除」 です。
所得控除の種類としては、基礎控除、扶養控除、社会保険料、生命保険料、医療費控除などがあります。
所得税は、税額を計算する前の所得(利益)から上記の所得控除を差し引いた金額に税率をかけて計算します。
税額控除とは…
所得控除分を差し引いた後の金額(課税所得金額)に、税率をかけて計算した税額から直接、控除が適用。
税額所得は住宅ローン・寄付金・ふるさと納税などが控除対象となり、計算された所得税額を限度として、控除の金額がすべて税額から差し引かれます。
住宅ローン控除は、本来納めるべき 所得税を そのまま控除できる(10年間で最大 400万円が節約できる) ということになります。
また、住宅ローン控除は所得税からの控除となりますが、所得税から控除しきれなかった分は住民税(上限136,000円)から控除されます。
下記は、所得税額をどのように算出するのか、そして住宅ローン控除はどの部分から返金されるのかをまとめた図になります。
この図のように、本来であれば総所得から所得税・住民税などを差し引いた残りの金額が手取りになるのですが、住宅ローン控除を受けることで、支払った所得税と住民税の一部からお金が戻ってくるということになります。
続いて、おそらく一番気になる「いくら戻ってくるの?」という疑問にお答えしていきます!
所得税から控除される金額は以下です。
毎年末の住宅ローン残高における最大控除額 or 毎年末の住宅ローン残高の1%のいずれか少額の方
では、毎年末の住宅ローン残高における最大控除額とはいくらなのでしょうか?
これは、取得した不動産が非課税物件(売主が個人)なのか、課税物件(売主が事業者)なのかで変わります。
非課税物件(売主が個人)の場合
最大控除額 200万(年間20万ずつ10年間)を控除できます。
課税物件(売主が事業者)の場合
最大控除額400万(年間40万ずつ10年間)を控除できます。
また、2020年12月までに課税物件を購入し、居住を開始すると3年間の控除延長が受けられます。
ただし、11年目以降は下記(3)の条件を加えたいずれかの一番安い金額が控除となります。
(非課税物件については延長の措置は有りません)
(1)年末の住宅ローン残高における最大控除額
(2) 年末の住宅ローン残高 の1%
(3)建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3
販売図面上では分かりませんが、マンションの価格は土地、建物の価格が一つになっています。
下記シミュレーションは説明を分かりやすくするために土地1000万円、建物4000万円の振り分けにしていますが、購入物件の場所や築年数によって内訳は変わりますので、予めご了承ください。
【5000万円(土地1000万、建物4000万と想定)の非課税物件を購入した場合の控除額シミュレーション】
※金利0.7%で1月から支払いが始まった場合で想定しています。なお、年末残高目安に金利分は含めておりません。
【5000万円(土地1000万、建物4000万と想定)の課税物件を購入した場合の控除額シミュレーション】
※金利0.7%で1月から支払いが始まった場合で想定しています。なお、年末残高目安に金利分は含めておりません
住宅ローン控除の適用条件
では、その「一定の条件」とは何でしょう??
条件には「人(住宅購入者)」が満たすべき条件と「購入物件」が満たすべき条件があります。
「人」の適用条件
以下の五つの条件をすべて満たす必要があります。
- 新築又は取得の日(※1)から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
- この特別控除を受ける年分の合計所得金額(※4)が、3,000万円以下であること
- 取得をした住宅の床面積が50㎡以上(※2)であり、床面積の2分の1以上の部分が自己の居住の用であること。
-
10年以上にわたり分割して返済する方法(※3)になっている こと
- 取得したその年を含む前後2年、合計5年の間に長期譲渡所得の課税の特例を受けていないこと。
※1,中古マンションを購入の場合、ここでいう「取得の日」というのはいつになるのでしょうか?原則的には引き渡しを受けた日(決済日)となるのが一般的です。しかし、実は「取得日の決定は納税者の判断に任されている!」のです。売買契約の締結日、代金受領日、登記日のうち、どれを引き渡しの日とみなすか判断の難しい場合があるため、税務上では、納税者が売買契約の日と登記の日のどちらかを選んで取得日とすることができます。※2 、下記が判断基準となります。a) 床面積は、登記簿に表示されている床面積b) マンションの場合は登記簿上の専有部分の床面積です。販売図面に掲載の専有面積ではありませんのでご注意ください!。多くの場合、 販売図面の専有面積は、登記簿上の専有面積より3㎡前後多く記載されています。c) 店舗や事務所などと併用になっている住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含めた建物全体の床面積d) 共有する住宅の場合は、ほかの人の共有持分を含めた建物全体の床面積※3、下記は対象となりません。a) 勤務先からの借入金の場合による、無利子又は0.2%に満たない利率による借入金b) 親族や知人からの借入金c)居住しなくなったり、ローンの繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になった場合。※4. 合計所得金額には給与所得だけでなく、退職金や金融資産の売買によって得られた所得も含まれるので注意が必要です。
「物件」の適用条件
住宅ローン控除はほぼすべての住宅が対象となりますので、購入物件がマンションでも戸建でも条件に変わりは有りません。
ただし、中古物件の購入の際、マンションは一般的に耐火構造であることから築25年までが対象となることに対し、戸建は一般的に非耐火構造(木造)が多いため、築20年までとなることがほとんどです。
これは、耐火構造か非耐火構造かが判断基準ですので、戸建=築20年というわけではありません。
中古で購入する場合は、購入物件が耐火構造なのか非耐火構造なのかを確認しましょう。
なお、対象の築年数を過ぎていても以下のいずれかをクリアしていれば、控除を受けられる場合もあります。
- 耐震基準適合証明書の取得
- 住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得
- 既存住宅売買瑕疵保険の加入
住宅ローン控除と所得税の関係(シミュレーション)
上記にて住宅ローンは所得税から控除されると説明しましたが、最大控除額が定められていても、「所得税+136,000円」を超える額の控除は受けることが出来ません。
そのため、所得税額によっては最大控除を受けられない場合も生じます。
下記に年間で受け取れる最大控除額の簡単な表を作成しました。
上記の通り、新築などで長期優良住宅の適用が受けられる物件であったとしても、
年収が700万円だと支払う所得税が31万円となるため、
住民税からの補填(136,000円)を含めたとしても446,000円にしかならず、
最大枠50万円の控除を受け取ることはできません。
参考までに、各年収ごとの所得税率及び所得税額をまとめます。
ご自身の年収に近いものを下記の表より探して頂き、
その所得税額+136,000円が控除を受けられる最大額と考えてください。
住宅ローン控除の手続き方法
物件を購入すれば自動的に控除が受けられるわけではありません。
もちろん、控除を受けるための手続きが必要です。
自営業などの方には馴染み深いかもしれませんが、会社員の方など会社で年末調整を行っていた方は注意してください。
住宅ローンの控除を受けるためには物件を購入した翌年に必ず「確定申告」をしなければいけません。
一度確定申告を行った翌年以降は、年末調整で控除を行えばOKです。
控除を受けるための必要書類
- 源泉徴収票
- 金融機関等からの住宅ローン年末残高証明書(写し)
- 土地・建物の登記事項証明書
- 土地・建物の売買契約書(写し)
- 工事請負契約書(写し)
- マイナンバーの本人確認書類(写し)
- 確定申告書A・B
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
築20年以上の木造住宅(非耐火建築物)または築25年以上のコンクリート造マンション(耐火建築物)の場合
耐震基準を満たしていることを証明するために下記のいずれか1つの書類が必要です。
- 耐震基準適合証明書
- 既存住宅性能評価書(写し)
- 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
注意事項
最後に、住宅ローンの控除を受ける際に注意をしなければいけないことをいくつかまとめておきます。
下記に該当する場合は、注意してください。
夫婦など、共有名義にて購入をする場合
申請は、住宅ローンを借入れる者が世帯単位ではなく、個人単位で申請します。
つまり、共有名義で住宅ローンを組む場合は、一人一人が’住宅ローンの控除を受けることが出来ます。
例えば、8000万円のローンを4000 万ずつ住宅ローンを組んで夫婦の共有名義で購入した場合、課税物件なら一人400万円ずつ合計800万円、非課税物件であれば200万円ずつ合計400万円まで控除が受けられれます。
ただし、下記の場合は注意が必要です。
共有名義での購入は「連帯保証型」「連帯債務型」「ペアローン型」「親子ペアローン」「親子リレーローン」などいくつかの方法があります。
連帯債務型、ペアローン、親子ペアローン、親子リレーローンは名義となるお二人それぞれに債務が発生するため、二人とも控除を受けることが可能です。(ただし、控除の対象となる金額は登記の持分割合によって決まります)
一方で、連帯保証型は債務者がどちらか1人となりますので、片方(主債務者)のみしか住宅ローンの控除を受けることはできません。
事務所兼住居など特殊利用の場合
購入した物件で事業(店舗、事務所など)を行おうとする場合も注意が必要です。
住宅ローンの控除を受ける条件としては、住居部分が1/2以上必要です。
また、受けられるのは居住部分のみとなります。
ただし、9割以上が住居なら全額受けることが可能です。
まとめ
住宅ローン控除は、住宅購入を検討している人にとってはとてもありがたい制度です。
ただし、控除を受けるには一定の要件があること、さらに住宅ローンの借り入れ金額や所得税額によっては満額控除されないことも頭に入れておいてください。